「寂しい」「淋しい」を正しく使い分ける!読み方や意味の違いも

「寂しい」は「淋しい」と書くことがあります。また、読み方も「さびしい」と読んだり「さみしい」と読んだりしますが、意味の違いや読み方の使い分け方はあるのでしょうか?

この記事では、「寂しい」「淋しい」の読み方と意味について解説します。あわせて使い方や使い分け方と例文も紹介しています。

「寂しい」「淋しい」の読み方とは?

「寂しい」「淋しい」本来の読み方は「さびしい」

「寂しい」「淋しい」の本来の読み方は「さびしい」です。

古くから「寂しい」の漢字を「さびしい」と読むという使い方がされていましたが、のちに「淋しい」の漢字も同じ読み方で併用されるようになりました。

「さびしい」が変化して「さみしい」と読むことも

「寂しい」「淋しい」は「さみしい」とも読みます。もともとの「さびしい」が変化して、「さみしい」という読み方も併用されるようになりました。

歴史をひもとくと、古い時代には「さぶし」と発音していたものがやがて「さびし」に変化し、江戸時代以降になってさらに「さみし」に変化した発音が現れたという由来があります。

漢字常用表は「寂しい(さびしい)」のみ掲載

文化庁が定める「漢字常用表」に掲載されているのは、「さびしい」の読み方の「寂しい」のみです。「寂」は、「寂:さび」「寂しい:さびしい」「寂滅:じゃくめつ」などが掲載されていますが、「淋」は「人名用漢字」のみに示され「漢字常用表」にはありません。

「漢字常用表」とは、「一般の社会生活において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安」として文化庁から発表される漢字表です。公用文書や新聞・雑誌などにおいて使用する漢字はこの表に基づいて選択されています。「人名用漢字」とは、戸籍に名として記載できる漢字のうち、常用漢字に含まれないもののことをいいます。

放送用語では「さびしい」の読み方が標準形

近世以降に「寂しい」「淋しい」は、「さびしい」「さみしい」の読み方の両方が用いられてきました。しかし「常用漢字表」に「寂しい(さびしい)」のみが登録されていることや、伝統的な読み方が「さびしい」であることから、現在の放送用語で標準とされている読み方は「さびしい」となっています。

「寂しい」「淋しい」の意味とは?

「寂しい」「淋しい」の意味1:満たされない気持ち

「寂しい」「淋しい」の意味はどちらも同じですが、大きく分けて2つの意味があります。1つ目の意味は「満たされない気持ち」です。

たとえば、いるはずの人や寄り添う人がいなくて満たされない気持ちを「寂しい/淋しい(さびしい・さみしい)生活」と表現したり、あるはずの物やあればいいと思う物がなくて満たされない気持ちを「ふところがさびしい(さみしい)(=持ち金が少ない)」と表現します。

「寂しい」「淋しい」の意味2:人の気配がなく心細い気持ち

2つ目の「寂しい」「淋しい」の意味は、「人の気配がなく心細い」と感じる気持ちです。人の気配がなく、孤立したような場所を「寂しい集落」「淋しい山道」などと表現します。

「寂しい」と「淋しい」意味の違い

先に説明した「満たされない気持ち」「人の気配がなく心細い気持ち」のどちらの意味でも「寂しい」「淋しい」を使うことができますが、一般的には多くの人が使い分けを行っています。

「寂しい」は客観的な意味、「淋しい」は情緒的な意味が強い場合に用いられます。

たとえば、情緒的な心情を表す「家族と離れてさびしい(さみしい)」については、「淋しい」を用いることが多く、客観的な事情を表す「ふところがさびしい」という場合は、「ふところが寂しい」と「寂しい」を使うことが多いです。

「寂」と「淋」の意味とは?

「寂」の意味は「わびさび」「荒れはてる」「ひっそりして静か」

「寂」の漢字にはいろいろな意味があります。「さび」と読む場合の「寂」は、「わびさび」に代表される枯淡の美を表す言葉で、古びていたり枯れていたりして趣があることを意味します。

「さびれ」と読む場合には、荒れはてることという意味になります。たとえば、にぎわいがなくなった商店街を表したいときは「寂れた商店街」と表現するとよいでしょう。

「寂」を「じゃく」と読む場合は、人声や物音がなくひっそりとして静かなことを意味します。仏語としての意味もあり、修行によって迷いの境地を脱却し悟りの境界に入ることを表す言葉です。また、僧が亡くなることを「入寂(にゅうじゃく)」といいます。

いずれの意味においても、「寂」は「にぎやか」とは反対にある物悲しいさまを表す語であり、これらの意味が心情を表す言葉としての「寂しい」に転じて使われるようになったと考えられます。

「寂」の熟語は「寂滅」「静寂」「閑寂」など

「寂」の熟語には「寂滅(じゃくめつ:煩悩の境地を離れること、転じて、死ぬこと)」、「静寂(せいじゃく:しんとしてものさびしいこと)」、「閑寂(かんじゃく:ひっそりとさびしいこと)」などがあります。

「淋」の意味は「水がしたたりおちる」

「淋(りん)」の字は、もともとは水をそそぐの意から「水がしたたりおちる」という意味を持ちます。「淋」が「寂」の語に通ずる意味はなく、どのようにして「寂しい」と同じ意味・読み方として「淋しい」が使われるようになったのかは不明です。

「淋」は常用漢字ではないことから、日常的に使われることはあまりなく、熟語としては、水や汗がしたたり流れるさまという意味の「淋漓(りんり)」があるくらいで、あまり日常で使われる漢字ではないといえます。

「寂しい」「 淋しい」の使い方と例文

別れによる「物悲しさ」は「寂しい/淋しい」どちらも使う

それまで身近にいた人との別れや、人との関係が疎遠になったことにより感じる物悲しさを「寂しい」「淋しい」の語で表現します。心情を表す際は「寂しい」とあわせて「淋しい」も多く使われる傾向があります。また、「淋しい」と書く場合には「さみしい」と読むことが多いです。

例文
  • 家族から離れて単身赴任の寂しい生活が始まった
  • 卒業によってみんなと離れるのはとても淋しい

「人の気配がなく心細く感じる」気持ちには「寂しい」

別れの物悲しさとはまた違い、人の気配がなく心細く感じる気持ちを表す際にも「寂しい」「淋しい」が使われます。

ただし、この意味の場合は、先に説明した「ひっそりして静かなこと」という意味を持つ「寂(じゃく)」の語の意味が強く反映されているため、漢字としては「寂しい」が使われることが多いです。

例文
  • 寂しい山道に分け入ってしまい、急いでふもとにたどり着いた
  • 閉店する店が増えて今では寂しい町になってしまった

「あればいいと思うものがなく満ち足りない」気持ちを表す

「寂しい」「淋しい」は、どちらも「あればいいと思うものがなく満ち足りない」気持ちを表すときにも使います。

例文
  • 今月は懐が寂しいので節約しなければならない
  • 口が淋しくてつい甘い物を食べてしまう

まとめ

「寂しい」「淋しい」は、どちらも同じく「さびしい」「さみしい」の読み方が併用されています。常用漢字としては「さびしい」という読み方の「寂しい」のみで、放送用語や公文書などでは「寂しい(さびしい)」が使用されています。

基本的な意味は両者とも同じですが、「寂しい」がひっそりとして静かな様子や客観的な心細さを表すのに対して、「淋しい」は物悲しい心情を表すときに特に使われることが多いといえます。