「佳境」の意味とは?「忙しい」は誤用?使い方や類語・英語も紹介

「佳境」は字義通りの意味以外にも、幅広く用いられている言葉です。しかし、本来のものとは異なった意味で使われている事例も増えているため、一度正しい意味を押さえておく必要がありそうです。この記事は「佳境」の意味と語源をはじめ、例文つきで使い方なども紹介しており、語句への理解を深められるものです。

「佳境」の意味と語源は?

「佳境」とは「興味深い場面」のこと

「佳」という文字には「よい」という肯定的な意味があり、「佳作」という熟語からもその意味がうかがえます。そして「境」は「場所」「ありさま」のことを指す文字です。

熟語の構成からみると、「佳境」は「佳き(よき)境」となり、「よいところ・ありさま」ということを言い表しています。

「佳境(かきょう)」には、物語や演劇などにおける興味深い場面のことを表す意味があります。ストーリーの導入や説明部分などを経て、もっとも感動する場面や見ごたえのある場面にたどり着くのですが、このような興味を感じさせる重要な場面のことを「佳境」というのです。

「佳境」には「景色のよい場所」という意味も

「佳境」には、景色のよい場所という意味もあります。観光地を案内する冊子やWebサイトなどには、美しい眺望を得られるスポットが写真入りでよく紹介されているものです。

「佳」という文字には「美しい」「素晴らしい」という意味がありますが、多くの人が心を奪われて忘れられない、あるいはまた見てみたいと思うような風景は「佳境」と呼ぶにふさわしい場所といえます。

しかし近年では、景色のよい場所を指す言葉として「佳境」より「絶景」のほうが多く用いられているようです。

「佳境」の語源は四字熟語の「漸入佳境」

「佳境」の語源は、状況などが次第に優れた部分へさしかかって行くことを表した四字熟語の「漸入佳境(ぜんにゅうかきょう)」です。

中国の歴史書である『晋書』に登場する画家の「顧愷之(コガイシ))という人物は、サトウキビを食べるときにまず先端部分から口にしていました。

その理由を尋ねられたときに答えた言葉が「次第に佳境に入る」という意味の「漸入佳境」でした。サトウキビは根元に向かって甘さが増すため、「先端部分から食べ始めることでだんだんおいしくなっていく」ということを言いたかったようです。

「佳境」の使い方と例文

「佳境」は流れのあるものの重要な部分のこと

日常生活で「佳境」という熟語を用いられている事例は、物語や演劇だけではありません。むしろビジネスにおいては、業務などの流れにおける重要なステージを指して用いられるケースが多くみられます。

たとえば新しく立ち上げたプロジェクトが完成に向かうような局面や、プレゼンテーションで最も盛り上げたい部分のことを「佳境」と呼ぶのです。

「佳境に入る」「佳境を迎える」はよく使う表現

「佳境」は、熟語を単独で用いることもできます。しかし、定型的な言い回しで使われることも多くみられるもので、事例と意味は以下の通りです。

  • 佳境に入る:絶頂期にあること
  • 佳境を迎える:ピークを迎える
  • 佳境を超える:最盛期を過ぎること

「佳境」を使った例文

  • いよいよゲームは佳境に入ったため、一瞬たりとも目が離せなくなった。
  • コンペに向けたプレゼンの作成が佳境を迎え、社内の熱気はますます高まっている。
  • 我が社の一大プロジェクトは佳境を超えたようで、間もなく完成を迎えられそうだ。

「佳境」のよくある誤用とは?

「佳境」は「終盤」という意味ではない

時折、「佳境」を「終盤」という意味で用いている事例が見受けられます。しかし、「佳境」を「終盤」という意味で用いることは誤りです。

スポーツの試合をはじめ、最も重要で盛り上がりを見せる局面は終盤にみられることが多いものですが、「佳境」に「終盤」という意味合いはありません。

「佳境」は悪い意味で使わない

熟語に用いられている「佳」という文字には「よい」という肯定的な意味合いがあることから、「佳境」は悪い意味では使われない言葉です。

仕事が「佳境」に入ると業務はハードなものになりがちで、「プロジェクトが佳境に入ったので、過労気味だ」などと弱音を吐いてしまいそうになるかもしれません。

しかし「佳境」を使うのであれば、「チーム一丸となって頑張っている」というように、ポジティブな言い回しで表現するのが正解です。

「佳境」に「忙しい」ことを表す用法はない

「佳境」を迎えると、多くの場合忙しくなるものです。そのためか、「現在仕事が佳境に入っているので、残業は避けれられません」というように、「佳境」を「忙しい」という意味合いで使っている事例を見掛けます。しかし、「佳境」を「忙しい」という意味合いで使うことは誤りです。

「佳境」の類語

「佳局」は「佳境」の言い換えに使える言葉

「佳局(かきょく)」は「佳境」の「境」が「局」と入れ替わった言葉で、興味深い場面という意味と、囲碁や将棋などの好対局という意味を持つ言葉です。

囲碁・将棋など囲碁や将棋の勝負という意味の「局」は、「局面」や「政局」という熟語からもわかるように、物事のなりゆき・様子のことも指します。

つまり「境」と「局」は同じ意味の文字であるため、「佳境」と「佳局」は言い換え可能な同義語といえるものなのです。

「たけなわ」とはものごとの盛りのこと

「たけなわ」は、ものごとの盛りという意味の言葉です。通常平仮名で表記される「たけなわ」ですが、漢字では「酣」と書きます。

この文字は、酒を発酵させる過程でだんだん甘くなっている状態を表したもので、ここからものごとの盛りという意味で使われるようになりました。

なお、宴会の終盤に幹事が「宴もたけなわとなりましたが…」と声を掛けることがよくありますが、「たけなわ」に「終わり」という意味はありません。

「触り」とは話や文章の肝心なところという意味

「触り(さわり)」とは、話や文章の肝心なところや、音楽や物語などにおける最も感動的なところという意味の言葉です。

もともとは義太夫節の聞かせどころのことで、物語の重要な局面や感動を呼ぶ部分にあたるものを指す言葉でしたが、徐々に用途が広がっていきました。

しかし「触り」は、話の導入や最初の一部分という意味で使われている誤用の事例が多くみられるようになっています。

「佳境」の英語表現

「佳境」は英語で「climax」

「佳境」の英語表現は「climax」で、読みをカタカナ表記した「クライマックス」は、日本語としても通用しています。

「絶頂」「最高潮」という意味合いを持つ言葉で、小説や演劇などにおける最大の見せ場となる部分を指すものです。なお「climax」には「佳境」と同様に、「終盤」という意味はありません。

「highlight」も「佳境」と同じ意味合い

「highlight」の字義通りの意味合いは「とても明るい部分」で、物語のなかで光彩のある場面や最重要点、呼び物などを表す言葉としても用いられています。

読みをカタカナ表記した「ハイライト」も同じ意味で使われ、雑誌の特集記事や興業の目玉などを指して用いられるものです。

「佳境」の対義語

「興醒め」とは面白味が失せること

「興醒め(きょうざめ)」とは、それまで興味を持って楽しんでいた気持ちが冷めてしますことを指した言葉です。「佳境」に入るときの高揚感とは正反対に、「興醒め」すると潮が引くように興味がなくなります。

なお「醒める」は表外読みにあたるため、新聞や雑誌などでは「興ざめ」と表記されている言葉です。

「どん底」とは最悪の状態

「どん底」とは、「底」に強調の意味を加える接頭辞「ど」をさらに強調した「どん」がついた言葉で、それ以上の下はない底の底という意味です。

ものごとの最低・最悪の状態を指して用いられ、一番盛り上がる「佳境」と正反対の状態を表しています。

まとめ

「佳境」の意味と語源のほか、類語・対義語と使い方を例文つきで紹介しました。おいしいものは最後にとっておきたいのが人情のようで、熟語の語源にまでなっています。

「佳境」は「終盤」ではなく「一番いいところ」ということを、この機会に再確認していただければ幸いです。