「十分」と「充分」の違いとは?意味・使い分け方と例文も解説

「じゅうぶんです」と書くときに「十分」か、それとも「充分」なのか迷ったことはありませんか。どちらの漢字もよく使われていますが、その違いがわかりにくいですよね。

この記事では「十分」と「充分」の違いと意味のほかに、使い分け方を例文と併せて解説します。この機会に十分と充分の違いをはっきりさせてみませんか。

「十分」と「充分」の違いとは?

「十分」と「充分」は物量的か精神的かの違い

「十分」と「充分」は物量的か精神的かの違いによって使い分けられています。「十分」は物の量や数値が満たされているときに使われる言葉で、一方「充分」は主観的で、精神的に満たされているときに使われる言葉です。

「十分」と「充分」の共通の意味は「満たされているさま」

「じゅうぶん」という言葉を辞書で引くと、「十分」と「充分」の両方が併記されています。つまり、「じゅうぶん」は「十分」と「充分」のどちらの漢字でも書くことができて、その意味も同じだということです。

「十分」および「充分」の意味は3つあります。

「十分」および「充分」の3つの意味
  • 意味①10に等分すること。
  • 意味②満たされていて、不足がないさま。
  • 意味③思い残すところがないさま。また、必要なだけ、それ以上あるさま。

「十分」と「充分」の違いが問われるときは、意味②と➂で使われています。

「十分」とは「物量的に満たされるさま」

本来なら「十分」と「充分」の意味に違いはないのですが、「十分」と「充分」を使い分けるときに違う意味が派生しています。

「十分」は「十」の意味から物量的に満たされるさまという意味を表しています。「十」はアラビア数字の10という意味のほかに、全部そろっているという意味もあります。

「十」という数字によって全体を表すことから、「十分」は数量的または物理的に満たされるさまという意味で使われています。

「充分」とは「精神的に満たされるさま」

「充分」は「充」という字の意味から精神的に満たされるさまという意味を表しています。「充」とは「中身がいっぱいに詰まっている」や「満ちる」という意味の漢字です。この「満ちる」という状態にだけフォーカスすることで、「充分」は精神的に、または感覚的に満たされるさまという意味で使われています。

「十分」「充分」「じゅうぶん」のどれを使うのが正しいのか?

憲法で「充分」が使われている

日本国憲法第37条では「充分」が使われています。日本国憲法第37条は日本国憲法の第3章にある条文で、刑事被告人の権利について規定しています。

憲法のような公式な文書で「充分」が使われていることから、「充分」は積極的に使ってもいい言葉のように思えますが、文化庁は別の見解を示しています。

公用文ではかな書きか「十分」

文化庁の見解では、「じゅうぶん」を漢字で書くならば「十分」を書くべきだとしています。憲法で「充分」が使われている事実を認めながらも、「充分」はあて字なので「十分」を使うことを推奨しています。

最近では「じゅうぶん」はひらがなで表記される傾向もあることから、公用文のような公務員が作成する公式の文書はもちろんのこと、一般的な文書でも「じゅうぶん」はかな書きされるか、漢字で書くならば「十分」を使うべきだとしています。

「十分」は教育漢字だから推奨

なぜ「十分」を推奨するのかというと、「十分」の「十」の字の方が画数は少ない上に、教育漢字だからです。

教育漢字とは、小学校で習う漢字のことで、2017年の段階で1026字あります。そのうち「十」は小学1年生で習う漢字です。一方「充」は常用漢字ではありますが、教育漢字ではありません。中学校で習う漢字です。

「十分」と「充分」の使い分け方と例文

「十分」を使うことが推奨されていますが、日常的に「充分」も使われています。そこで、「十分」と「充分」の使い分け方は解説します。

「十分」は物量的に満たされているときに使う

人数や時間、距離、お金など、数によって満たされていることが表されるときに「十分」が使われます。例えば、「人がじゅうぶんに集まった」というときは「十分」です。

このように、満たされている状態を数値化できるようなときに「十分」を使います。

「十分」を使った例文
  • 時間が十分足りた。
  • あと1㎞走れば、今日は十分にジョギングをしたことになる。
  • 新しいデスクが買えるだけの十分なお金が貯まった。

「充分」は精神的に満たされているときに使う

「充分」は精神的に、または感覚的に満たされているときに使います。例えば、「そのお気持ちだけで充分です」のように相手の気持ちをおもんばかることで満たされているというときに「充分」が使われます。

精神的に満たされるということから、本人しか判断できないようなときに、または人によって判断が変わるようなときに「充分」が使われるというように覚えておいてもいいでしょう。

「充分」を使った例文
  • 充分に楽しめた。
  • この間の休暇では、休養が充分に取れた。
  • 君は充分、頑張ってるよ。だからそれ以上無理しないで。

時間を表すときには「十分」の使い方に注意

「十分」という字は、「じゅうぶん」の他に、「じっぷん」や「じゅっぷん」とも読めます。「じゅうぶん」と読めば満ち足りていることという意味になりますが、「じっぷん」や「じゅっぷん」と読めば10分のことで時間の長さを表しています。

「時間は十分ある」という文章では、時間がたくさんあるのか、それとも時間が10分あるのか、どちらの意味でこの文章が書かれているのかがわかりません。前後の文章との兼ね合いで、どちらの意味で書かれているのかがわかります。

「十分」を使った文章で意味がわかりにくくなるときは、「十分」をひらがなで表記するか、または別の表現をする工夫が必要でしょう。

「時間は十分ある」を別の言葉で置き換えた例
  • 時間がたっぷりある。
  • 時間がたくさんある。
  • 時間が多分にある。

「十分」と「充分」のどちらも使えるケースとは?

「十分」と「充分」の両方を使える場合は意味が違う

「十分」と「充分」を使い分けることで、伝えたい内容が変わってくることがあります。言い換えれば、「十分」と「充分」を使い間違えると違う意味が伝わってしまうことになります。

下記に例をあげながら、「十分」と「充分」を使った場合の意味の違いを解説していきましょう。

「理解」での「十分」と「充分」の使い分け

理解の度合いを表す文章で、客観的に見て理解度が判断される場合には「十分」を、自分の判断で理解度を判断するときには「充分」を使います。

「理解」での「十分」と「充分」の使い分け例
  • この成績なら十分に理解したと言えるでしょう。
  • まだ充分に理解したとは言えない。もう少し問題を解いてみるか。

「注意する」や「気を付ける」での使い分け

「注意する」や「気を付ける」では、視覚的にとらえられるものから身を守るときには「十分」を使うのに対して、気持ちの上で注意するときなどには「充分」といった使い分けができます。

「注意」を使った「十分」と「充分」の使い分け例
  • 注意が十分ではなかったので、事故を起こした。
  • 充分に注意して、車を運転する。

食後に「いただきました」というときの「十分」と「充分」

食事が終わったときに「じゅうぶんいただきました」という表現が使われることがありますが、食事量が多く、たくさん食べて満たされているときは「十分」を、食事量の問題ではなく精神的に満たされているときには「充分」を使います。

「じゅうぶんいただきました」の使い分け例文
  • もう食べられない!十分いただきました。
  • 大変おいしく、充分いただきました。

まとめ

「十分」と「充分」は物質的に満たされているのか、それとも精神的に満たされているのかの違いで使い分けされています。ただし「充分」はあて字のため、「十分」を使うことが推奨されていますので、迷った時には「十分」か、ひらがなで「じゅうぶん」を使いましょう。

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「難解なワードでもわかりやすく」をモットーに、常識ワードからビジネス用語、時には文化・アート系など、幅広く記事を書かせていただいています。ドイツ在住で2児の母。好きな食べ物はビターチョコレートとナッツ類。