「インクルージョン」とは?ビジネスや福祉・教育での意味と事例も

「インクルージョン」はビジネス、社会福祉・教育、宝石用語とさまざまな分野で使われる言葉です。基本的な意味は同じですが、使われ方が変わってきます。「インクルージョン」の意味や、使い方・事例を確認しましょう。「ダイバーシティ」「インテグレーション」との違いも、簡単に分かりやすくご説明します。

「インクルージョン」の意味とは

インクルージョンとは「包括/包含」という意味

「インクルージョン」を日本語に訳すと「包括(ほうかつ)」や「包含(ほうがん)」になります。「包括」とは「全てをまとめること」、「包含」は「包み込み、中に含むこと」という意味です。日本ではビジネスや社会福祉・教育、宝石の分野でよく使われています。

反対の意味は「エクスクルージョン」

「インクルージョン」と反対の意味をもつ言葉は「エクスクルージョン」です。「排除(はいじょ)」や「排他(はいた)」を意味します。「排除」とは「押しのけて、なくすこと」、「排他」は「仲間以外を受け入れないこと」という意味です。

後ほど紹介する「ソーシャル・インクルージョン」の対義語「ソーシャル・エクスクルージョン」にも使われている言葉です。

【ビジネス】インクルージョンの使い方と事例

ビジネスでの意味は「さまざまな人を尊重し能力を活用する」

ビジネス用語としての「インクルージョン」の意味は「さまざまな人を尊重して、能力やスキルを活用すること」です。性別や人種、学歴などをすべて個性として認め、それらで差別することなく平等に活躍する機会を与える企業・組織を目指す考え方です。

日本では「女性労働者の活躍」「外国人労働者の受け入れ」のように、目に見える分かりやすい違いに注視しがちだと言われています。ほかにも性格や価値観、性的指向などの内面的な違いも尊重し、差別なく活躍できる職場に整える必要があります。

「ダイバーシティ」との違いは「受け入れ」と「活用」

「インクルージョン」と「ダイバーシティ」の違いは「活用するかどうか」になります。「ダイバーシティ」とは年齢や人種、性別などを問わずさまざまな人材を「受け入れる」考えです。

「ダイバーシティ」は、1960年代にアメリカで推進され始めたと言われています。移民が多いアメリカでは、マイノリティな民族の権利を守ったり、企業で受け入れたりする必要が生まれていました。当初は雇用割合ばかりに注目され、働きやすい空間を整備しない企業が多かったようです。職場環境の悪さから雇用した労働者が早期退職してしまうという問題がありました。

そのため、1980年代に受け入れるだけではなく「尊重し活用する」インクルージョンの考え方が生まれました。

「ダイバーシティ&インクルージョン」という考え方

現在では「ダイバーシティ」と「インクルージョン」は両立して考えられています。「ダイバーシティ&インクルージョン」とまとめて呼ばれることもあります。略語は「D&I」です。

「ダイバーシティ」で門戸を広げ、多様な人材を雇用します。そして「インクルージョン」で、ひとりひとりの個性を尊重し働きやすい空間を作っていくのが基本的な考えです。また、能力を伸ばし活躍の機会も広げていきます。

企業における「インクルージョン」の事例

  • 育児休暇や時短・在宅勤務など、育児・介護と仕事を両立しやすい制度を整える
  • 外国人や障害者、LGBTの人向けの相談窓口を設ける
  • 差別禁止の社内規定や研修を整備する

【社会福祉/教育・保育】インクルージョンの使い方と事例

社会福祉では「ソーシャル・インクルージョン」と使う

社会福祉の場では「ソーシャル・インクルージョン」と使われています。意味は「どのような人も排除せず、社会の構成員として支え合うこと」です。「社会的包摂(しゃかいてきほうせつ)」とも呼ばれます。障害の有無や学歴、犯罪歴などで差別せず、すべての人が参加できる社会を目指す取り組みを意味します。

反対の意味は「ソーシャル・エクスクルージョン」

「ソーシャル・インクルージョン」の対義語は「ソーシャル・エクスクルージョン」です。「社会的排除」とも呼びます。障害者や失業者(特にスキル・経験が少ない若年層)、犯罪歴のある人などを排除する格差社会を意味します。

1970年代のフランスで経済的格差が問題になったことから「ソーシャル・エクスクルージョン」と呼ばれるようになりました。当時のフランスでは移民の増加や産業構造の変化が原因で、長期失業と貧困状態が続く労働者が増えていたようです。この問題の解決のために「ソーシャル・インクルージョン」が生まれました。

「インクルージョン教育」は「障害の有無で区別しない」

「インクルージョン教育」とは「障害の有無で区別せず、一人ひとりのニーズに合った教育を同じ場所で学ぶ」ことです。日本では「インクルージョン」を形容詞にした「インクルーシブ教育」という名称でもよく使われています。

学校教育が中心ではありますが、ここでの「学び」は「生涯学習」を意味します。生涯学習とは「一生のうちに行うあらゆる学習」のことです。学校で授業を受けるだけでなく、スポーツや芸術活動、ボランティア、趣味なども学習に含まれます。

「インクルージョン教育」と「インテグレーション」の違い

障害の有無で学ぶ場所を分けないという点は「インクルージョン教育」と「インテグレーション(統合教育)」は同義の言葉だと言えます。

インテグレーション(統合教育)」の大きな違いは、障害の有無を区別したうえで同じ場所で学ぶことです。簡単に言うと「学ぶ場所の統合」を重視した考え方になります。元々は、障害の有無で通う学校やクラスが分かれていた状態から、同じ場所で学ぶことになり「統合」という表現になったと考えられます。

「インクルージョン教育」と「インテグレーション(統合教育)」

  • インクルージョン教育(インクルーシブ教育)
    障害の有無で区別はなく「一人ひとりの学習スピード」に合わせて同じ場所で学ぶ
  • インテグレーション(統合教育)
    「障害の有無を区別したうえで」同じ場所で学ぶ(場所の統合がポイント)

【宝石】インクルージョンの使い方と事例

宝石における意味は「宝石の内包物・不純物」

宝石に関して使う「インクルージョン」とは、「宝石(鉱物)の内包物や不純物」を意味します。宝石の成長過程に、異物が混入したり結晶がゆがんだりして生まれます。

宝石の価値を下げる要因になることが多い

宝石の「インクルージョン」は、価値を下げる要因になることが多くあります。「見た目の美しさが損なわれる」「耐久力が下がる」などが理由です。

購入者の視点からすると「安価で買える」点がメリットになるでしょう。インクルージョンが目立たないデザインのものを選ぶ人や宝石の個性としてインクルージョンに愛着を持つ人もいるようです。特定の宝石や一部の地域でしか発生しないインクルージョンがあり、宝石を鑑定する際の目安になっています。

「インクルージョン」で宝石の価値が上がる例

一般的には評価が低い「インクルージョン」ですが、なかには希少性につながり通常の宝石より価値が上がるものもあります。

たとえば「エメラルド」に含まれる「三相インクルージョン」。木の葉のような形状をしたインクルージョンは、コロンビア産エメラルドの証拠として価値が高いとされています。ほかにも虫の化石のインクルージョンがある「琥珀(こはく)」は希少性が高く、鉱物収集家たちから愛されている宝石のひとつです。

まとめ

「インクルージョン」はビジネスの場で「さまざまな人を尊重し、平等に活用すること」という意味で使われる表現です。他にも「どのような人も排除しない社会」「障害の有無で区別しない教育」などに使われています。

「インクルージョン」の考えが広まれば、ひとりひとりが住みやすい・働きやすい社会に変わっていくかもしれません。