「一矢報いる」の意味と読み方とは?使い方の例文と類語・英語も紹介

「一矢報いる」はスポーツの実況中継や戦いのシーンなどで、「何とか反撃する」というニュアンスで使われます。無意識のうちに口から出る言葉ですが、正しい意味を理解していますか?

ここでは「一矢報いる」の意味や読み方、使い方とその例文、類語や英語などを紹介します。ぜひ語源についても注目してみてください。

「一矢報いる」の意味と読み方とは?

「一矢報いる」の意味は「少しながら反撃する」

「一矢報いる」とは「少しながら反撃する」という意味です。もともと、敵や相手の攻撃に対して、反撃をするという意味がありますが、大勢を覆すほどの猛反撃ではなく、少しながらに仕返しをしたり、やり返すことを表します。

「一矢報いる」とは、到底、受けた攻撃に対して叶わないような、ごく小さな反撃を指します。逆転するには至らない、ごくわずかな反撃を意味し、相手を追い越したり、逆転するような威勢を表す言葉ではありません。

「一矢報いる」は「最後の意地を貫く」という意図もある

「一矢報いる」とは、相手が絶対的に優勢の立場にいる時、劣勢的な立場として「最後に振り絞る底力」というようなニュアンスも持ち合わせています。完全な負け試合ではなく、「負けじ魂」や「意地を貫く」というような意図で用いられるのが「一矢報いる」です。

到底、結果は覆すことができないが、相手にチクリと痛みを与えるような「ちょっとした反撃」を見せることが「一矢報いる」の意味するところとなります。

たとえ、それが相手に響くような大きな反撃ではなくても、また小石に躓く程度の小さな仕返しでも、最後の意地を張って何とか反撃をすること、それが「一矢報いる」です。

「一矢報いる」の読み方は「いっしむくいる」

「一矢報いる」の正しい読み方は「いっしむくいる」です。「一矢」の部分を「いしや」と読んでしまい「いしやむくいる」と誤って言ってしまうことも多いようです。正しくは「いっしむくいる」となりますので、この点だけ気を付けましょう。

「一矢報いる」の語源とは?

「一矢報いる」の語源は元寇で武将が放った矢

「一矢報いる」は、モンゴルや高麗が行った日本への侵攻「元寇」での出来事が語源となっています。日本の鎌倉時代、中国大陸を中心に隣国を支配していた元朝や属国が、対日本への侵略を2度に渡り行っていました。

当時、日本はかつてない厳しい戦況下に置かれ、反撃する威力を完全に失っていました。そんな過酷な状況の中、日本の武将「小弐景資(しょうにかげすけ)」が、モンゴル帝国・元に使えた武将「劉復亭(りゅうふくこう)」の左肩に一本の矢を放ち、馬から転落させました。

もちろん、元寇が放つ威勢に対し、わずか一本の矢が、相手の勢いを完全に止めるものではありません。しかし、少しの反撃が猛将の肩にダメージを与え、大勢を多少なりとも振り向かせることができたのは確かでしょう。

このようなストーリーを背景に「少しの反撃」というニュアンスで使われるようになった慣用句が「一矢報いる」となります。

「一矢報いる」は「どん底の状況下で放つ小さな矢」

鎌倉時代に行われた元寇は非常に強力なもので、圧倒的な軍事力を誇っていました。当時の日本の武士が到底迎え撃つ相手ではなく、日本の劣勢を覆すことはほぼ無理だとされていました。

そんなどん底な状況で、相手に致命傷を与えないまでも、少なからず現行の勢いを減速することができたことは確かでしょう。もちろん「小さな矢が大勢にチクリと刺さったまで」に留まりましたが、たとえ、微弱な力でも強力な敵国に仕返しできることを証明した瞬間でもあったと言えます。

「一矢報いる」の使い方と例文

「一矢報いる」は意地や根性を称える意味で使われる

たとえば、スポーツの試合で相手方が断然リードをしているとします。どうみても負け試合に見える状況で、少しながらに反撃を加えることができた時、また何とか最悪の場面を避けることが出来た時などに「一矢報いる」という表現を使います。

「一矢報いる」とは、スポーツマンとしての底力を見せた時、最後の意地を見せた時に、その勇姿や根性を称える意図をもって使われることがあります。

例文
  • 完全試合かと思われましたが、一矢報いる反撃で何とか流れを止めました。
  • 見事な反撃です。一矢報いるダブルプレーとはこのことでしょう。
  • 最後の力を振り絞り、一矢報いる踏ん張りを見せました。

「一矢報いる」は激しい討論の場面でも使われる

「一矢報いる」は、スポーツや格闘技などフィジカルな戦いの場面で使われるだけではなく、激しい討論や話し合いの場面、また選挙戦などでも使われます。

たとえば、2つの対立するグループや組織が激しい討論を展開しているとします。圧倒的に一方が優勢な状況であり、他の一方が劣勢である時、最後の力を振り絞って反撃をすることも「一矢報いる」と言い表すことができます。

つまり、討論や話し合いも激しくなると「争い」の類へと変化します。スポーツ試合や身体的な戦いだけではなく、言葉の攻防戦に対しても「一矢報いる」という表現を使うことがあります。

例文
  • 一矢報いる反撃もままならず、話し合いは問題を抱えたままお蔵入りとなった。
  • どうしても組合が優勢だが、社員として一矢報いるためにも、声を上げなければならない。
  • 選挙戦で、無名の新人候補が一矢報いる演説を繰り広げている。

「一矢報いる」を「何とか助かる」という意味で使わない

「一矢報いる」という言葉の響きから「何とか助かる」といった誤ったニュアンスで使ってしまうことがあるようです。これは「一矢」を「助け」や「援助」、また「報いる」を「獲得する」「得る」という意味で解釈してしまっている例だと考えられます。

あくまで「一矢報いる」とは、「大勢は崩せないものの、わずかな反撃をして仕返しをすること」また、「到底、結果はひっくり返せないが、最後の意地や底力を見せること」という意味で使うようにします。

誤用の例文

X 車がパンクしたが、スペアがあったため、何とか一矢報いた。

「一矢報いる」の類語とは?

「一泡吹かせる」は「相手の不意をつくこと」

「一泡吹かせる」とは、相手や敵の不意をつくことを意味します。予想外のことや裏をつくようなことをやってのけて、驚かせることを「一泡吹かせる」と言います。

「一矢報いる」と「一泡吹かせる」が、意味として似ているのは「一矢」に対して「一泡」という表現を使っている点です。たくさんの泡ではなく、「ほんの一つの泡」を吹かせること、つまり「相手の意表をついて、ちょっと驚かせる」というニュアンスで使われています。

「一杯食わす」は「意表をついて騙すこと」

「一杯食わす」とは、相手の意表やついたり、予想とは異なることをして騙すことを意味します。「騙す」といっても、悪態や悪気を伴って人を裏切るという意はあまりなく、どちらかというと「してやらかす」「まんまとはぐらかす」というニュアンスが強いのが「一杯食わす」です。

また「一杯食わす」は「一矢報いる」のように攻撃や反撃を直接的に表す慣用句ではありません。しかし、「一矢」と同じく「一杯」という表現を使うことで、「ちょっとしたお返しとして、相手を騙す」と意味で使われることがほとんどです。

加えて、一般的には「一杯食わされる」「一杯食わされた」というように、受け身で使うことが多いでしょう。この場合、ニュアンス的には「まんまとやられた」「してやられた」といったところです。

「一矢報いる」の英語フレーズとは?

「一矢報いる」は英語1「fight back」

「一矢報いる」は日本語が持つ独特な慣用句であるため、相手に通じるよう理解しやすい意訳が必要となります。「一矢報いる」とは、つまり相手の攻撃に対して反撃をすることです。英語で表す時は軸のセンテンスとして「fight back」を使うことができます。

また「一矢報いる」の詳細の意味である「「勝ち目がないが反撃する」というニュアンスを示したときは「fight back against impossible odds」などと表現してもよいでしょう。

  • I did fight back but it is only again impossible odds.
    一矢報いる攻撃だったが、結果は変わらなかった。

「一矢報いる」の英語2「return a blow」

「一矢報いる」とは、ちょっとした仕返しをすることです。それなら、相手の攻撃に対する一撃という意味で「return a blow(または、punch)」という表現を使うこともできます。

この言い回しで大切なのは「a blow」「a punch」というように、「一撃」という単語を使っている点です。

  • I returned a blow against the opponent.
    対戦者に一矢報いる反撃をした。

まとめ

「一矢報いる」の読み方は「いっしむくいる」で、「わずかな反撃をすること」「大勢は変えられないが、仕返しをすること」という意味を持ちます。スポーツや論争のシーンで、相手の猛攻撃に句読点を打つかの如く「ちょっとした反撃を加える」というニュアンスで使われます。

ビジネスシーンでも、自分が圧倒的な不利な立場にいる時、また意地を見せて立ち上がったり、太刀打ちしようとする時にも使うことができます。大勢に向い打つ大きな力ではなくとも、少しの仕返しをするときに「一矢報いる」という慣用句を使ってみましょう。

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都内私立大卒(経済学部)、旅行会社、中堅商社を経て、豪州に移住。母親に小さい頃から「ことわざ」「言い伝え」「四字熟語」を毎日聞かされていた経緯あり。読んでいて疲れない記事書きがモットーです。日本最高!