「琴線に触れる」の意味や語源とは?例文や類語・対義語も解説

「琴線に触れる」の表現は、一度気になると使ってみたくなる、あるいは語源やその意味を調べたくなるような、不思議な言葉ではないでしょうか。

この記事では、「琴線に触れる」の意味や語源、使い方と例文を解説します。あわせて誤用である「怒り」の意味での使い方や、類語・対義語、英語表現についても紹介します。

「琴線に触れる」の意味とは?

「琴線に触れる」の意味は「心の奥底に触れて感動すること」

「琴線に触れる(きんせんにふれる)」とは、良いものが心の奥底に触れることで感動する心情を表現する成句です。

「琴線」とは琴(こと)の糸のことです。共鳴しやすい性質を持つ琴の糸に、物事に感動する繊細な感情をたとえた表現が「琴線に触れる」です。

「琴線に触れる」の表現が「琴の糸」の比喩であるという背景を知らなければ、意味を正しくとらえることが難しい表現であるともいえます。

「琴の糸(琴線)」は「共鳴する繊細な心情」を表す

「琴線に触れる」とは、たんに感銘を受けるという表現では表現しきれない、人間の心の深いところにある繊細な心情を表す言葉です。

繊細に共鳴する「琴の糸」に人の心をたとえることで、心の奥深くに秘められた、微細な心情を表現することができるのです。

「琴線に触れる」の語源は英語の「heartstrings」

「琴線に触れる」の語源は英語の「heartstrings」です。「heartstrings」とは、「心の琴線」「深い感情」という意味です。

いつ、誰が訳したのかは明らかではありませんが、深い感情や心を「heartstrings(心の弦)」にたとえた英語表現に触れた日本人が、「琴線」という美しい言葉に訳したことが語源となっています。

英語表現については、のちほどくわしく解説します。

「琴線に触れる」の使い方と例文

揺れ動かされた心を表現する「心の琴線に触れる」

「琴線に触れる」は、文章にするときは「心の琴線に触れる」というように「心の」をつけて使われることも多くあります。「心の琴線」と書くことによって、より情緒的で詩的な風情を持つ表現となります。

例文
  • 人と人とのやり取りの中でふと心の琴線に触れる瞬間がある
  • 無垢な子どもの表情が心の琴線に触れたのか、涙が出て驚いた

ビジネスで用いる「琴線に触れる」の使い方と例文

ビジネスにおいても、「琴線に触れる」の表現を用いて、顧客サービスなどのコンセプトを表現することがあります。

例文
  • お客様の琴線に触れるサービスをの提供を目指します
  • お客様の琴線に触れるような、美しく感動的な商品づくりが重要だ

「怒り」を誘発するという意味で使うのは誤用

近年は、「琴線に触れて激怒した」「怒りの琴線に触れた」などの使い方で、怒りを誘発する、あるいは、不愉快になるといった意味で誤って使われることがあるようです。

文化庁が平成19年度に行った「国語に関する世論調査」によれば、「琴線に触れる」の意味を尋ねたところ、本来の意味であると回答した人が約38%、本来の意味ではない「怒りを買ってしまうこと」と回答した人が約36%いたということです。

「琴線に触れる」は、美しいものなどに触れて感動する心を表現する成句であるため、本来の意味で使うようにしたいものです。

「琴線に触れる」の類語とは?

「心」を用いた表現:「心に響く」「心を打つ」「心を揺さぶる」

「琴線に触れる」は、「心の琴線に触れる」と使われるように、「心」が感動によって繊細に動くさまを表す表現です。同じような意味を持つ「心」を使う類語には、「心に響く」「心を打つ」「心を揺さぶる」などがあります。

「琴線に触れる言葉」は「心に響く言葉」「心を打つ言葉」「心を揺さぶる言葉」と言い換えることができます。ただし、「心を揺さぶる」の表現は、「動揺する」という意味で使われることもあり、その場合は類語とはなりません。

「胸」を用いた表現:「胸に沁みる」「胸に迫る」「胸を突く」

「心」ではなく「胸」を使った類語の表現もあります。「心」は「胸」にあるため、胸も心と同じだといえるでしょう。「胸に沁みる」「胸に迫る」「胸を突く」などです。

いずれも、良いものや美しいものなどが、胸(心)を動かすさまを表しています。

深く心を動かされる「感銘を受ける」

「琴線に触れる」は「感銘を受ける」と大きな意味においては同義です。「感銘を受ける」とは、ある物事に触れて深く心を動かされることを表現します。

しかし、「感銘を受ける」は、心に深く感じるとともに、「心に刻み付け、忘れないこと」という意味合いが強いところが「琴線に触れる」とは異なります。

「琴線に触れる」の対義語とは?

目上の人を怒らせる「逆鱗に触れる」

「琴線に触れる」と同じ「触れる」を使う成句に「逆鱗に触れる(げきりんにふれる)」があります。

「琴線に触れる」を「怒りを誘発する」という意味で誤って認識している人がいることを説明しましたが、似た響きのある「逆鱗に触れる」と混同しているのではないかとの見方もあります。

「逆鱗に触れる」とは、「目上の人を激しく怒らせること」という意味です。中国の故事にある、それに触れると竜が怒るという、のどの下に逆さに生えた鱗を「逆鱗」と呼ぶことが語源です。

いやな気持ちを起こさせる「気に障る」

「琴線に触れる」とは逆のネガティブな意味で心が揺れることを表現するのが「気に障る(きにさわる)」です。

「気に障る」とは、いやな気持を起こさせる、あるいは感情を害するという意味で、良いものに触れて感動するという意味の「琴線に触れる」とは反対の感情であるといえます。

「障る」とは「動きなどがさえぎられる・害になる」というネガティブな意味を持ち、やわらかく暖かいイメージの「触れる」とは反対の意味です。

「琴線に触れる」の英語表現は?

「琴線に触れる」は英語で「touch the heartstrings」

「琴線に触れる」は、英語で「touch the [somebody’s] heartstrings」「strike a [the right] chord (in somebody’s heart)」などと表現できます。

「heartstrings」とは「心の琴線」という意味で、「琴線に触れる」の成句の語源となった語です。「心・心臓」という意味の「heart」と、「弦楽器・コード(弦・紐)」という意味の「strings」が一緒になった単語です。

「touch the heartstrings」の「touch」は「触れる」という意味です。

また、「strike a  chord 」の「chord」とは「弦」という意味で、「strike」は「打つ、鳴らす」という意味です。そして、「心」という意味の「heart」と供に「心の弦を打つ・鳴らす」(琴線に触れる)となります。

例文
  • 彼のスピーチは聴衆の心の琴線に触れた。
    His speech touched the heartstrings of the audience.
  • その悲しい話は私の琴線に触れるものだった。
    The sad story struck a chord in my heart.

まとめ

英語「heartstrings」を「心の琴線」と訳した人がいて、またその心が動くさまを「触れる」と誰かが表現したことから、「(心の)琴線に触れる」という味わい深い成句が出来上がったようです。

しかしその「触れる」が仇(?)となり、「逆鱗に触れる」との混同が起こってしまったようです。しかし、本来は誤用である「怒りの琴線に触れる」との表現も、その状況によっては文学的で雅な表現であるともいえるかもしれません。